2020年2月19日水曜日

2020年2月19日 朝日夕刊6面 失踪実習生働かせた疑い 派遣会社代表ら逮捕
2020年2月20日 朝日朝刊29面 失踪実習生5人を派遣容疑 会社代表ら3人逮捕 SNSで人集め

「技能実習先から失踪したベトナム人を違法に働かせたとして、大阪府警は19日、人材派遣会社の代表ら3人を出入国管理法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕した。…府警は、失踪したベトナム人技能実習生をSNSなどを通じて集め、仕事のあっせん先から仲介料を得ていたとみて捜査を進める。」というのが夕刊の記事である。
「ベトナム人5人は不法残留や資格外活動の疑いで府警に逮捕され、4人は起訴されている。公判記録などによると、5人はいずれも失踪した技能実習生だった。化学薬品会社側は1人につき時給1750円をMTS側に支払っていたが、ベトナム人が実際に受け取っていた時給は1100円ほどだったとされる。」とのことである。
「法務省によると、日本で働きながら技術を学ぶ外国人技能実習生は2018年末時点で約32万8千人。ベトナム人が最多で半数の約16万人を占める。失踪した実習生は11年の1534人から18年は約6倍の9052人に。同年のベトナム人失踪者は64%と際立つ。」とのことであるが、失踪の理由については、「受け入れ先などから法令違反を含む不正な扱いを受けていた疑いが確認された。内訳は最低賃金違反58人▽契約賃金違反69人▽時間外労働の割増賃金不払い195人▽賃金からの過大控除92人――など。来日時に多額の借金を背負わされている例も少なくないという。」ということで、受け入れ側の問題が多く見られるようであり、「受け入れ企業を監督し、実習生を支援する役割を担う監理団体の一部が、本来の機能を果たしていない」ことにも、記事は言及している。
翌日の朝刊の記事も、同じ趣旨のものであるが、紙面の制約もあるのだろうが、ベタ記事的な扱いである。

「外国人技能実習制度」は、「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。」とされている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index.html
しかし、その実態は、安価な労働力として取り扱われており、実習先で不要とされれば、滞在許可を失って帰国せざるを得ないため、劣悪や悪質な労働条件にも耐えることを強いられ、耐えられなければ失踪せざるを得ない状況になっているのである。中には、福島の放射能除染作業に従事させられた人もいる。職業選択の自由はなく、労働者としての取り扱いも十分とは言えない。
このような実態から、「外国人技能実習制度」は、国連と米国から、「奴隷労働」と批判されている状況である。
https://hbol.jp/202393
同様の批判は、ネットで検索すれば、膨大な数が出て来る。何より問題なのは、このような実態によって、「夢の国」と妄想されている日本が、「悪魔の国」であるとの印象が、実習生やその親族などの脳裏に深く刻み付けられることであろう。
「人づくり」に協力、などという綺麗事では済まない。この記事にあるように、失踪実習生に対するピンハネ労働も横行している。これでは、現代版の「安寿と厨子王」の世界である。
では、どうすればよいのか。私は、安易な単純労働力としての外国人の受け入れには反対であるが、すでに技能実習生として入国してきた人々に対しては、日本政府は、きちんと保護する責任がある。そこで考えられるのは、失踪実習生を含め、いったん技能実習生として受け入れた人々に対しては、例えば3年間といった期限を定めて、正規の労働者としての取り扱いをしてはどうかと思う。職業選択の自由も保障し、日本人の労働者と同一の取り扱いとすべきである。
その一方で、これ以上の問題悪化を防ぐため、「外国人技能実習制度」の新規受け入れは停止し、当面は、「特定技能の在留資格」による入国に限定すべきであろう。また、在留期限が切れ、あるいは不法に入国した者に対しては、日本的に本国に送還すべきであり、そのような者を雇用した企業や団体についても刑事罰を科すべきであろう。
外国人を受け入れるのなら、それなりの覚悟がいる。米国や英国のように、いったん正規や黙認で受け入れた後に、排斥的な取り扱いを行うのは、詐欺的行為である。それと同様に、技能実習生の名目で単純労働者として取り扱っている日本の現状も、欺瞞であるとしか言いようがない。「先進国としての役割」「国際社会との調和ある発展」とは、あまりにひどいお題目ではないか。「技能、技術又は知識の開発途上国等への移転」を本当に考えているのなら、日本に来てもらうことではなく、日本から専門家をその国に派遣するのが筋であろう。

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