2020年2月7日金曜日

2020年2月7日 日経朝刊29面 (私見卓見)学力そぐ就活の見直しを

八大学(旧帝大7校と東京工業大学)工学系連合会会長である東北大学の長坂徹也工学部長による寄稿である。「周囲の大学院生らから就活に関する悩み」を踏まえ、「企業も人財確保に必死な様子がうかがえる。学生は少しでも良さそうな企業へ就職するのに懸命だ。教員は学生を学修・研究に少しでも専念させようと必死で、三すくみの状態といえる。」としている。
連合会は2019年11月に、「大学は引き続き学生の質を保証していくので、企業側も就職・採用活動の早期化・長期化傾向を是正してもらいたいとする内容」の声明を出したそうである。「特にインターンシップの名を借りた実質的な会社説明会は、学生の学業専念を阻害する要因のひとつであり、見直しを求めている。」とのことである。
そして、「今の就活状況では、グローバル化の時代に日本を背負ってもらうべき若者の未来が閉ざされると危惧している。」と結んでいる。

結局のところ、「誰か良い学生はいませんか」とする企業の姿勢が、「若者の研究力や基礎学力の低下を招き、博士課程への進学や海外留学の機会や意欲をそぐことにもつながっている。」ということである。日本型雇用の限界や弊害が指摘されて久しいが、日本の教育現場の荒廃を深めている状況にあるわけである。そのことは、結局、日本の大学の国際競争力を低下させ、日本企業は、それを見て、即戦力になる従業員は、高給で海外の大学・大学院から採用しようとしているわけである。まさに、悪循環の最たるものと言えよう。
しかしながら、言われて久しい弊害の是正や除去は、恐らく、そう簡単には進むまい。その背景には、そもそも、採用活動に限らず、他社を横目で見て活動する日本企業の体質がある。そうなると、経済活動に減速によって就活狂騒曲が終焉し、もう一度冷静な目で、自社に必要な人材の吟味、自分に必要な技能や能力の習得、学生を導くための教育や研究の高度化、という本来の姿に戻る時期を待つしかないのかもしれない。
もっとも、そうなった場合に、今後は一斉に採用を手控える「就職氷河期」が再来するようであれば、馬鹿は死ななきゃ治らない企業が次々に淘汰されないと事態は改善しないのかもしれず、また、そんな無意味な事を繰り返している日本企業が、グローバル競争で駆逐されたり、本当に優秀な学生から見放されたりする可能性もある。
日本の大学について言えば、最新技術の何たるかも知らない文部科学省の役人や政治家が、権限を振りかざして疲弊させている研究現場と、記述式・民間英語検定の導入という愚かしい「入試改革」の惨状を見れば、瀕死の床にあるようにも思えるが。

0 件のコメント:

コメントを投稿