2020年3月27日金曜日

2020年3月27日 日経朝刊16面 ●新型コロナで「内定取り消し」 4要件満たなければ無効

「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、4月入社予定の新卒学生らの待遇が不安定になっている。入社予定の会社に内定を取り消されたり、当面の自宅待機を指示されたりした場合、法的にはどう理解し、どう対応すればいいのだろうか。」という記事である。
まず、「厚生労働省によると、3月25日時点で新型コロナの影響で学生の内定を取り消した会社は20社、計30人が確認された」とし、「様々な会社で内定取り消しが発生する可能性がある」と続けた上で、「内定は、法的には企業と入社予定者の間に労働契約が交わされた状態を指す」ので「労働契約法が定める「解雇権の乱用」の規定が適用されるため、合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない内定取り消しは無効」としている。
そこで、「確認しておきたいのは、整理・解雇の要件」とし、「企業が深刻な経営悪化などを理由として内定を取り消すことは整理解雇として認められる。ただし(1)人員整理の必要性がある(2)解雇回避のために最大限の努力をした(3)解雇対象者の選定が合理的(4)手続きが妥当――の4つの条件をすべて満たすことが必要」と解説している。
したがって、「内定を取り消すのは非常にハードルが高く、業績見通しが厳しいといった程度では認められない。労働問題に詳しい嶋崎量弁護士によると、内定取り消しが有効になるのは倒産が不可避だったり、倒産を避けるため整理解雇が欠かせなかったりする場合に限られる。」と述べている。
その上で、「内定取り消しより可能性が高い」のは、「企業が内定者に4月以降に自宅待機を命じたり、入社辞退を強要したりすることだ」としているが、「企業側の責任で社員を休業させた場合は、労働基準法に基づき社員に平均賃金の60%の休業手当を払わねばならない。」ことになる。
記事では、嶋崎弁護士の「立場の弱い学生などは、企業側の働きかけに応じてしまうケースも考えられるが、応じる必要はない。会社側が事実上、一方的に内定を取り消す権利はないので、簡単に応じてはいけない」との指摘で結んでいる。

この記事で理解しておかなければならないのは、就活で内定段階まで到った場合、学生であっても、労働者として保護されるという点である。こうした保護は、実は、アルバイトの場合にも適用されるものが多い。就活をするのなら、次の『知って役立つ労働法』などを参照して、最低限の知識は、身に着けておいた方がいいだろう。
https://www.mhlw.go.jp/content/000507287.pdf
一方、厚生労働省は、内定取消が重大な事態であるので、有期契約労働者、パートタイム労働者及び派遣労働者の雇用維持等に対する配慮と併せて、経済団体等に要望を行っている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10497.html
やっと内定に到ったのに、それを取り消されるのではたまったものではないだろうが、新たな道へ進むにしても、労働者としての自覚や意識を持つことは大切であり、そのことは、無事に入社できた場合であっても同じである。

なお、下記のNHKの番組「入社式直前 一転の内定取消も… 新型コロナウイルス」では、実際に内定取消にあった学生の生々しい状況が報じられている。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200331/k10012358941000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200331/k10012360101000.html






0 件のコメント:

コメントを投稿